原子半径とイオン半径

ミーケン。

2016年07月11日 22:45

高校化学のよく目にする問題で
「次の各原子を半径の大きい順に並べ替えなさい。」
というものがあります。

この質問のセンター試験に向けた対策として、
原子半径、イオン半径それぞれ、これから述べることを暗記しましょう。

ではまず原子半径について。
原子半径の大小を判断するには次の①・②の事を覚えるとOKです。

① 同族元素の原子は周期表の下へ行くほど
  (原子番号が大きいほど)原子半径は大きくなる。

② 同一周期の原子は周期表の右へ行くほど
  (原子番号が大きいほど)原子半径は小さくなる。

では、それぞれの暗記のサポートとなるイメージを確認しましょう。

①は比較的イメージしやすいでしょう。
同族元素であれば原子番号が増えると周期表で一段ずつ下へと
移っていきます。ということは最外電子殻もK殻・L殻・M殻…と
一つずつ増えていくということで、それに伴って原子半径も広がっていく
というイメージですね。

問題は②のイメージ。これは結構苦労すると思います。
同一周期の元素であれば皆同じ最外電子殻を持っていて、
半径に差がないのではないか、と思ってしまいます。
しかし実際は同一周期の元素の原子は周期表の右へ行くほど、
つまり原子番号が増加するとともに原子半径は小さくなっていくのです。
ただし希ガス元素の原子は除いて考えてください。

理由としては次のようなイメージです。
原子番号が増加すると原子核中の陽子の数が増えていきます。
陽子は正電荷を帯びているので原子の中心にある原子核の正電荷も
原子番号とともに大きくなっていく・・・
また、電子は負電荷を帯びており原子核の正電荷に引き付けられている
と考えると、原子番号が増えるとともに原子核から最外電子殻に
存在する電子に届く正電荷も大きくなり、最外殻電子がより強く原子核に
引き付けられるために原子全体としては引き締まっていく・・・。
結果、同一周期の元素では原子番号の増加とともに原子半径は
引き締められて小さくなっていく、ということです。

ここで、原子核中の陽子の数が一つずつ増加していくとともに、
最外電子殻の電子の数も一つずつ増加していくので、
正負の電荷は常に釣り合っていて、最外電子殻を引き締める強さは
常に一定ではないか・・・、との疑問が持ち上がります。

この疑問に対する答え方は難しいのですが、こう考えてはどうでしょう。

陽子の数と電子の数が同じであるといっても
原子核にすべてまとまって存在する陽子に対して電子は、
K殻,L殻,M殻…と原子核から距離の違う電子殻に収まっています。
つまり距離が違うため、それぞれの電子殻が原子核から受ける
正電荷の強さに差があり、陽子1つで電子1個を引き付けているという
イメージではなく、原子核からの正電荷で電子殻そのものが引き締められ
ているのだと考える・・・。この方が納得できると思います。

では次にイオン半径について。

これは先に述べた原子半径に比べるとイメージしやすいでしょう。
覚えるべき事は次の③と④の二つの事項です。

③ 周期表で同一族の元素のイオンは周期表の下ほど
 (原子番号が大きいほど)イオン半径が大きい。

④ 同一の電子配置を持つイオンであれば原子番号が大きいほど
 そのイオン半径は小さい。

それぞれのイメージですが、原子半径と同様に考えると良いでしょう。
まず③については最外電子殻が一つずつ増えていくことでイオンの半径も
大きくなるイメージですね。ここからは実際の問題を例にとりましょう。

例えば同一族のイオンであるリチウムイオンLi,ナトリウムイオンNa,カリウムイオンK
で見てみると、それぞれ1価の陽イオンなので原子番号より1つ少ない
数の電子を有していますからそれぞれの電子配置は、
Li が K2
Na が K2 L8
K が K2 L8 M8
・・・となっており、
最外電子殻が増えていくのでイオン半径も大きくなるというわけです。

④についても実例をもとにイメージすると、
例えばフッ化物イオンF-,酸化物イオンO2-,マグネシウムイオンMg2+,ナトリウムイオンNaでは
それぞれのイオンの電子配置が同じK2 L8 となっていて、
その全く同じ状態の電子殻を引き締める原子核の正電荷は、
原子番号が大きい方が陽子の数が多くなり、より強力であると考えるので
Mg2+ < Na < F‐ < O2‐
の順に原子核による引き締めの効果が弱くなり半径は大きくなっていく
と考えられます。

①~④で原子半径やイオン半径の大小比較問題に対する暗記事項を
そのイメージとともに確認してきましたが、
理屈が気にならない、もしくは気にしたくないという生徒は
単純にこれらの暗記事項を確認するだけで良いと思います。
センター試験のレベルであれば、あれこれ考えずにまずは覚えてしまう
ということが得点につながることも多々ありますから。

それでは夏バテなどしないように体調管理には気を付けて。
プラス思考で頑張れ、受験生!






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