演習問題で、『質量数12の炭素原子1個の質量を12とし、それを基準にして…』
という文章が出てくると、
「きっと原子量や相対質量の事が説明されているんだろ。
とりあえず選択肢からそれらの用語を選んじゃえ!」
・・・このように、漠然となんとなく問題を解いている生徒が多いのが
『原子量』と『相対質量』という2つの用語が絡んだ問題。
しかし選択問題ならまだしも、記述しなくてはならない場合は
これらの用語をイメージできていないと使い分けることはできません。
「原子量と相対質量ってどう違うの?」
この質問に対して私がよく例えに使うのが、
クローン人間です。(笑)
微妙に例えがズレている所もありますが、
ほとんどの生徒は納得してくれます。
質問に来た生徒に対してどのように話すかと言うと…、
私(宮城健)と、君とがそれぞれ周期表に載っているある元素だとする。
君の体重が57kgとして、私の体重が65kg。
もっとシンプルな数で体重を表示したいので、仮の体重を設定しよう。
この時、君の体重を仮に『1』と定めてそれを基準にすると、
私の体重は、57kg:65kg=1:?
と比例計算することで相対的に定まるね、この場合は私は約『1.14』だ。
このように1個の原子の質量を仮に別の数値で表現した時に
相対的に比例計算で決まる値、それが「相対質量」。
相対質量は原子1個1個に対してでてくる値だね。
しかし僕には体重は違うが遺伝子レベルで同じであるクローン人間が
複数存在するとする。
つまり君の体重を『1』としたときに『1.14』の宮城健もいれば、
『1.32』や『0.98』の体重を持つ宮城健もいるってわけだ。
それが原子の世界では同位体と言うことになるね。
しかし周期表上には今君の前にいる僕を含めた宮城健という
人間の情報を表示する枠が一つしかない。
ではどうするか。
宮城健全員の体重の平均を取らなければならないね。
この時求める相対質量の平均値こそが「原子量」ってわけ。
つまり原子1個に対して他の原子1個の話をしている間は「相対質量」、
同じ元素の原子に同位体が存在するなら、その存在比を考慮し
相対質量の平均値として計算された値が「原子量」ということだね。
…と、こんな感じで説明します。
質量数12の炭素の質量をその質量数と同じ「12」と定め、基準にすることで
その他の元素の原子の相対質量も質量数に近い数値となります。
(原子の質量は原子核中の陽子と中性子でほぼ決まるからですね。)
ですから高校化学のレベルの問題であれば、
相対質量は質量数と同じ整数値で表現してしまうのです。
よって実際の原子の質量を把握しなくても、相対質量を用いれば
質量数12の炭素原子1個に比べ、質量数28のケイ素原子1個は、
およそ2.3倍くらい重いんだな…。なんて実感しやすいわけです。
このような用語は記述試験のときに大きな差になることがあるので
使い分けられるようになりたいですね。