以前、ある生徒から
「テレビの番組で、湿った空気と乾いた空気ではどちらが重いでしょう?」
というクイズが出題されていたが、
「乾いた空気の方が重い」という答えに
納得できなかったので解説してほしいとの要望がありました。
面白いクイズなので高校化学の知識を用いて解説してみたいと思います。
まず気体であればその種類に関係なく、
同温・同圧において同体積中に同数の分子が存在するということを
再確認しておきましょう。
受験生の皆さんは
「0℃,1013 hPa(標準状態) において22.4 Lの気体中には
必ず1mol の分子が存在する。」
という覚え方をしている人が多いのではないでしょうか。
この事実は言い方を変えると、
「単一の気体分子であれ、複数の気体分子が混ざった状態であれ、
そこにある気体分子の数が同じであれば同温・同圧において
気体の体積は同じである。」ということです。
それでは本題に入りましょう。
乾いた空気と湿った空気の重さの比較ですが、
2つの重さを比較するときは、当然、同じ温度・同じ圧力・同じ体積で
比較するはずですね。
ここで例えば同じ大きさの別々の風船に、乾いた空気と湿った空気が
入っているとします。
それぞれ先の説明通り同数の気体分子が入っている状態というわけです。
その風船内の気体の質量を比較するにあたって混合気体の平均分子量
を考えてみましょう。
分子量の数値は1mol あたりの質量を示すので
分子量の比較で同数の気体分子の質量の比較ができることになります。
さて、乾いた空気の方は窒素N2 と酸素O2 とがおおよそ4:1であり、
それぞれの分子量はN2 が28、O2 が32なので、
混合気体としての平均分子量は
28×4/5 + 32×1/5 = 28.8
となります。一方、湿った空気には窒素N2と酸素O2以外に水蒸気H2Oが
若干含まれることになります。
しかし、同温・同圧・同体積の風船には同数の分子しか存在しない・・・。
つまり比較の対象である湿った空気中の分子の数は水分子も含めて
乾いた空気と同数の気体分子が存在するというわけです。
言い換えると湿った空気は水蒸気H2Oの分子の数だけ
乾いた空気より窒素や酸素は少ない。
「湿った空気の全分子数(H2O分子+N2分子+O2分子)」が
「乾いた空気の全分子(N2分子+O2分子)」
と同じだというわけです。
H2O分子の分子量は18であり、それがN2(分子量28)やO2(分子量32)
と入れ替わって存在する、つまり軽い分子が入っているのですから
平均分子量としては28.8よりも値が小さくなるというわけですね。
もう11月。日中はまだまだ日焼けをしてしまう沖縄でも
朝夕は涼しい風が吹き始めました。
季節の変わり目です。体調に気を付けて勉強してください。
頑張れ、受験生。