2019年12月03日
蒸気圧の計算~液体の水が残っているかどうか~
体積が10Lの真空容器に、ビーカーに入った0.1molの水を入れ、
温度を30℃に保ってしばらくすると、
容器内の気体の圧力は何Paになるか。
ただし30℃における水の飽和蒸気圧は48hPaで、
気体定数R=8.3×103とする。
上記のように蒸気圧を問う問題において、液体の水に限りのある場合は、
しばらく放置した結果、容器内には液体の水が
容器内にのこっているのかどうかを判断しないといけません。。
この問題がわかりにくいという生徒は
まず蒸発平衡(気液平衡)についてのイメージを確認しましょう。
気体の水(水蒸気)も液体の水も存在しない密閉容器内に、
液体の水の入ったビーカーを置いたとします。
時間の経過とともに、ビーカー内の水はその表面から蒸発していくため、
容器内には気体の水が増えていき、液体の水は減っていきます。
気体分子が増えると、液面に衝突して再び液体となる分子の数も
増えていきます。よって、液体の水が十分にあるならば、最終的には
単位時間あたりに蒸発する分子と凝縮する分子の数が等しくなり、
見かけ上、蒸発も凝縮も起こっていないように見える状態になります。
この状態を蒸発平衡(気液平衡)の状態と言います。
(蒸発平衡時の蒸気の圧力が、その温度における飽和蒸気圧です)
このように十分時間をおいた密閉容器内に液体が存在しているならば、
気体の圧力はその温度における飽和蒸気圧に達しているということですね。
では問題に戻ってみましょう。
問題文章では10Lの容器に0.1molの水をセットしたとあります。
最初、容器には水はありませんから、セットした水がだんだんと蒸発し、
次第に気体分子(蒸気)は増え、圧力は上がっていきます。
反対に液体の水は減っていくでしょう。
この後、先に述べた通り、液体の水がいくらか減った時点で、
蒸発平衡の状態になって気相の圧力が飽和蒸気圧に達する・・・
という可能性もあります。
しかし、セットした液体の水がどんどん蒸発していって、
気相(気体がある空間)が飽和蒸気圧に到達する前に蒸発しきってしまい、
液体の水が残らない・・・という可能性も否定できません。
ですから、このタイプの問題は、
とりあえず、セットした水すべてが蒸発してしまったと仮定して、
圧力を計算してみることです。
実際に計算してみると、気体の状態方程式PV=nRTより、
P×10 = 0.1×8.3×103×(273+30)
P = 25149 Pa
となります。
h(ヘクト)は100を意味しますから
P = 251 hPa
ということですね。
この値は30℃での飽和蒸気圧をオーバーしてしまっていますから、
現実にはありえない計算値となってしまいました。
つまりすべての水が蒸発したと仮定して計算しましたが、
実際はすべての水が蒸発する前に蒸発平衡の状態に到達し、
容器には液体の水が残っており、
気相の圧力は飽和蒸気圧になっていたと気づかされるわけです。
よって今回の問題の答えは48hPaということになります。
もちろん、すべての水が蒸発したと仮定しての計算結果が、
その温度における飽和蒸気圧を下回っていれば、
計算結果そのものが答えだということですね。
(その時は液体の水は残っていないことになります。)
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少しでも読む方の理解がつながる手助けができたなら幸いです。
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Posted by ミーケン。 at 08:05│Comments(0)
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