2017年12月16日
反応熱の表示~ 発熱反応・吸熱反応の判断 ~
今回は文章中に表示された反応熱を熱化学方程式に表示し直すとき、
発熱反応・吸熱反応のどちらで表示するのかについて書こうと思います。
物質が燃焼すると必ず発熱するので
燃焼熱を表す熱化学方程式では、反応熱(燃焼熱)を
正の値(発熱反応)として表示します。
また、生成熱や溶解熱であれば、与えられる反応熱の情報に
正・負の符号が付いているのでこちらも熱化学方程式に表示するときに
発熱反応か吸熱反応かの疑問は起こりません。
しかし蒸発熱や凝縮熱といった状態変化を表す熱化学方程式の場合、
与えられた反応熱を発熱反応、吸熱反応、のどちらとして、
つまり熱化学方程式の反応熱を正の値とするか負の値とするかで
迷ってしまうという生徒はけっこういます。
この迷いを解消するには物質の状態変化を熱運動のイメージからとらえ、
「熱を加える必要があるのか」、「熱を奪う必要があるのか」、
といった理解で考えてみるとよいでしょう。
一般に物質は低温から高温に変化するにつれて
固体→液体→気体と状態を変化させます。
低温・固体の状態では物質を構成する分子は
分子間力に引き付けられて集合しています。
それぞれの分子は定位置で振動している程度の熱運動しかしておらず、
熱エネルギーは比較的小さいといえます。
温度が上がってくると分子は熱エネルギーを周囲から受け取り
次第に熱運動が大きくなっていきます。
そして分子間力の影響を受けながらも比較的自由に動き出します。
この状態が液体の状態です。
さらに熱エネルギーを受け取り続けると分子は熱運動を増し、
ついには分子間力の影響を無視できるほど
大きな熱エネルギーを得て自由に飛び回ります。
この状態が気体の状態です。
つまり、固体→液体→気体と状態を変化させていくということは
物質は周囲から熱エネルギーを吸収していく、ということになります。
ですから熱化学方程式でこのような変化を表現するときには
吸熱反応としての表示となるのです。
では実際の問題文の表示を見ながら確認してみましょう。
例えば「水の蒸発熱は 44 kJ/mol です。」との文章表示を
熱化学方程式で表示し直すと・・・、
H20(液) = H2O(気) - 44kJ
となります。
文章では1mol の水が蒸発するために「必要な」熱量が表示されているので、
読み取る側が「吸熱反応(周囲から必要な熱エネルギーを吸収する反応)」
であると理解できていなければ
熱化学方程式中の反応熱に負の符号を表示できないということになりますね。
また気体→液体→固体と分子の熱運動が小さくなっていく状態変化では
物質を構成する分子は、持っていた熱エネルギーを放出して
熱運動を小さくする必要があります。よって発熱反応ということになるのです。
例えば冷たい水の入ったコップを放置しておくと
その表面に水滴がつくことがあります。
それは水蒸気がコップの表面にぶつかり、冷やされて凝縮したのです。
この時、コップに冷やされた、という表現に
ついつい「冷たい=吸熱反応」というイメージをもってしまいがちですが、
水蒸気は自らが持っていた熱エネルギーをコップ側に奪われた、
つまり自らはエネルギーを放出した、ということなので発熱反応なんです。
よく起こる勘違いなので気をつけましょう。
つまり「水の凝縮熱は 44 kJ/mol です。」と言われたなら、
H20(気) = H2O(液) + 44kJ
と表示するということですね。
ちなみに先の蒸発熱の熱化学方程式が正しく書けたなら
数学の方程式と同様に左辺右辺を移項したり、
両辺にマイナスをかけたりしてOKですから、
式の形を変えることで凝縮熱の熱化学方程式に表示し直すこともできますね。
まとめると、
「融解熱(固→液)」・「蒸発熱(液→気)」・「昇華熱(固→気)」といった
より熱運動が激しくなる方への状態変化は、
周囲から熱を吸収する必要があるのでいずれも吸熱反応、
「凝固熱(液→固)」・「凝縮熱(気→液)」・「昇華熱(気→固)」といった
熱運動が弱まる方向への状態変化は、
持っていた熱エネルギーを周囲に放出する(奪われる)必要があるので
発熱反応であると言えます。
今回の文章が少しでもヒントになった生徒がいたら幸いです。
それでは今回はこの辺で。
頑張れ受験生!
発熱反応・吸熱反応のどちらで表示するのかについて書こうと思います。
物質が燃焼すると必ず発熱するので
燃焼熱を表す熱化学方程式では、反応熱(燃焼熱)を
正の値(発熱反応)として表示します。
また、生成熱や溶解熱であれば、与えられる反応熱の情報に
正・負の符号が付いているのでこちらも熱化学方程式に表示するときに
発熱反応か吸熱反応かの疑問は起こりません。
しかし蒸発熱や凝縮熱といった状態変化を表す熱化学方程式の場合、
与えられた反応熱を発熱反応、吸熱反応、のどちらとして、
つまり熱化学方程式の反応熱を正の値とするか負の値とするかで
迷ってしまうという生徒はけっこういます。
この迷いを解消するには物質の状態変化を熱運動のイメージからとらえ、
「熱を加える必要があるのか」、「熱を奪う必要があるのか」、
といった理解で考えてみるとよいでしょう。
一般に物質は低温から高温に変化するにつれて
固体→液体→気体と状態を変化させます。
低温・固体の状態では物質を構成する分子は
分子間力に引き付けられて集合しています。
それぞれの分子は定位置で振動している程度の熱運動しかしておらず、
熱エネルギーは比較的小さいといえます。
温度が上がってくると分子は熱エネルギーを周囲から受け取り
次第に熱運動が大きくなっていきます。
そして分子間力の影響を受けながらも比較的自由に動き出します。
この状態が液体の状態です。
さらに熱エネルギーを受け取り続けると分子は熱運動を増し、
ついには分子間力の影響を無視できるほど
大きな熱エネルギーを得て自由に飛び回ります。
この状態が気体の状態です。
つまり、固体→液体→気体と状態を変化させていくということは
物質は周囲から熱エネルギーを吸収していく、ということになります。
ですから熱化学方程式でこのような変化を表現するときには
吸熱反応としての表示となるのです。
では実際の問題文の表示を見ながら確認してみましょう。
例えば「水の蒸発熱は 44 kJ/mol です。」との文章表示を
熱化学方程式で表示し直すと・・・、
H20(液) = H2O(気) - 44kJ
となります。
文章では1mol の水が蒸発するために「必要な」熱量が表示されているので、
読み取る側が「吸熱反応(周囲から必要な熱エネルギーを吸収する反応)」
であると理解できていなければ
熱化学方程式中の反応熱に負の符号を表示できないということになりますね。
また気体→液体→固体と分子の熱運動が小さくなっていく状態変化では
物質を構成する分子は、持っていた熱エネルギーを放出して
熱運動を小さくする必要があります。よって発熱反応ということになるのです。
例えば冷たい水の入ったコップを放置しておくと
その表面に水滴がつくことがあります。
それは水蒸気がコップの表面にぶつかり、冷やされて凝縮したのです。
この時、コップに冷やされた、という表現に
ついつい「冷たい=吸熱反応」というイメージをもってしまいがちですが、
水蒸気は自らが持っていた熱エネルギーをコップ側に奪われた、
つまり自らはエネルギーを放出した、ということなので発熱反応なんです。
よく起こる勘違いなので気をつけましょう。
つまり「水の凝縮熱は 44 kJ/mol です。」と言われたなら、
H20(気) = H2O(液) + 44kJ
と表示するということですね。
ちなみに先の蒸発熱の熱化学方程式が正しく書けたなら
数学の方程式と同様に左辺右辺を移項したり、
両辺にマイナスをかけたりしてOKですから、
式の形を変えることで凝縮熱の熱化学方程式に表示し直すこともできますね。
まとめると、
「融解熱(固→液)」・「蒸発熱(液→気)」・「昇華熱(固→気)」といった
より熱運動が激しくなる方への状態変化は、
周囲から熱を吸収する必要があるのでいずれも吸熱反応、
「凝固熱(液→固)」・「凝縮熱(気→液)」・「昇華熱(気→固)」といった
熱運動が弱まる方向への状態変化は、
持っていた熱エネルギーを周囲に放出する(奪われる)必要があるので
発熱反応であると言えます。
今回の文章が少しでもヒントになった生徒がいたら幸いです。
それでは今回はこの辺で。
頑張れ受験生!
Posted by ミーケン。 at 09:52│Comments(2)
この記事へのコメント
水の蒸発熱を答える問題で、答えが正になる理由がわかりました!ありがとうございます
Posted by ある受験生 at 2019年07月02日 16:15
お役にたてたようで何よりです。
受験勉強頑張ってくださいね。
受験勉強頑張ってくださいね。
Posted by みーけん。 at 2019年07月02日 20:21