2018年03月18日

沈殿かどうかを判断するということは?

いきなりですが問題です。以下の2つの実験のうち、
沈殿が生じる反応はどちらでしょうか。

実験①:水酸化ナトリウム水溶液に炭酸カリウム水溶液を加える。
実験②:水酸化バリウム水溶液に硫酸ナトリウム水溶液を加える。

高校化学の深いところまで理解している生徒なら
濃度や各イオン同士で生じる塩の溶解度積が知りたくなるところですが、
センター試験のレベルで大雑把に問われていると考えてくださいね。

先に答えを記しておくと、
①の反応は何も起こらない
②の反応は白い沈殿が生じる。
・・・となります。

このタイプの問題は、
『一般には水に溶けやすいはずのイオン結晶の中には
水に溶けにくいものもある。それらを覚えていますか…』
と言い換えることができます。
どの陽イオンと陰イオンでできている物質は水に対してよく溶け、
また水に溶けにくいのか…。
この事実の暗記と文章の読み方が問題を解くカギなのです。

例えば硫酸ナトリウムNaSO4は水によく溶ける物質です。
よってその結晶を適量持ってきて水に入れてかき混ぜると
ナトリウムイオンNa+と硫酸イオンSO42-とに電離して拡散していきます。
私たちの目には結晶がだんだん小さくなって溶けていくように見えるでしょう。
この事実は、ナトリウムイオンと硫酸イオンがそれぞれ別の水溶液中に存在し、
その溶液同士を混ぜ合わせることで2種のイオンが出会っても
それぞれイオンとしてバラけたまま水溶液中に存在する、
混ぜ合わせた溶液に変化はない…ということと同じです。

しかしイオンの組合せによっては水に溶けにくい結晶もあります。
例えば硫酸カルシウムCaSO4という物質。
このイオン結晶は前述と同じように
陽イオン(Ca2+)と陰イオン(SO42-)とでできていますが
水にはほとんど解けません。結晶を水に沈めていくらかき混ぜても
容器の底を転がるだけで溶けて小さくなっていく様子は見られないのです。
言い換えるとカルシウムイオンと硫酸イオンがそれぞれ別の水溶液中に存在し、
その溶液同士が混ぜ合わされるとカルシウムイオンと硫酸イオンとが接触し、
どんどん集まって沈殿となってしまう…。というイメージです。

先の①・②の問題文に出てくる陽イオンと陰イオンの
組み合わせを見てみましょう。

①はナトリウムイオンNa+と水酸化物イオンOH-、
カリウムイオンK+と炭酸イオンCO32-とが混ざり合いますが、
どの陽イオンと陰イオンの組み合わせも水によく溶けるものであり、

②はバリウムイオンBa2+と水酸化物イオンOH-、
ナトリウムイオンNa+と硫酸イオンSO42-とが混ざった時に
カルシウムイオンCa2+と硫酸イオンSO42-の組み合わせでできる硫酸バリウム
BaSO4が水に溶けにくいイオン結晶(沈殿)になる…ということです。

教科書に掲載されているイオン結晶(固体)の写真を見て、
固体なんだから、すべてが沈殿だと勘違いする生徒が多いですが、
水に溶けやすい結晶は水中では溶解し、水に溶けにくい結晶は沈澱してしまう、
どの結晶が沈澱となるかは覚えるしかない…という意識が必要なのです。

また、文章を読むときに「水溶液」なのか「固体」なのか、をイメージするため
ちょっとした表現の違いも大切です。

例えば、「炭酸ナトリウム」といえば常温で固体、
それを水に溶かすと「炭酸ナトリウム水溶液」となって
ナトリウムイオンNa+と炭酸イオンCO32-とが水溶液中でバラけている・・・。
「炭酸カルシウム」といえば常温で同じように固体だが、
それを水に混ぜてもほとんど溶けずに沈んだまま。
カルシウムイオンCa2+と炭酸イオンCO32-とが別々の水溶液に存在するとき、
その2つを混ぜ合わせると炭酸カルシウムCaCO3の沈殿が生じる・・・。

どうでしょうか。少しでもイメージをつかむキッカケになったでしょうか。

あとはどの陽イオンと陰イオンとの組み合わせが沈殿になるのかを覚えるだけ!
このブログの別のタイトルでも色々とまとめていますからのぞいてみてください。
興味のある方は私のホームページから
センター(基)シリーズの『イオン分析①②』のDVDを
お使いになることも検討してみてくださいね。

頑張れ!受験生!

沈殿かどうかを判断するということは?



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Posted by ミーケン。 at 08:16│Comments(0)受験
 
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