2012年08月26日

酸化数の例外って…

酸化還元反応の単元で勉強する「酸化数」、
化学式中の各原子の酸化数を表示することで、
どの物質が反応の前後で酸化または還元されたのかを
読み取るのに便利です。

しかし判断のスピードを速めるための「酸化数」が
酸化還元の理解をつなげるのに、
じゃまになってしまっている人もいます。

酸化数のルールでは、
①単体中の原子はゼロとする。
②化合物中ではHが+1、Oが-2とし、
 化合物全体の酸化数の和をゼロとする。
③イオンだと、構成原子の酸化数の総和がイオンの価数になる。
といったルールをもとに各原子の酸化数を決定します。

そこで、例外として教わることになる過酸化水素(H2O2)は
「Hが+1、Oは例外で-1です。」としているだけで、
なぜ?ということを省略している場合が多いのです。

これでは少し深い問題に対応できません。
例えば水素化ナトリウム(NaH)はどうでしょう?

この場合Naの酸化数が+1、Hは-1です。
なぜだかわかりますか?

理由は、酸化還元本来の意味にあります。

電子を放出するとその物質は酸化されたといい、
電子を受け取るとその物質は還元されたといいます。
酸化還元とは電子のやりとりです。

では結合している粒子間の電子はどうなっているのでしょう。

ここで電気陰性度が関わってきます。
電気陰性度は希ガスを除き、
一般に周期表上で同一周期なら右へ行くほど、
同一族なら上に行くほど大きく、
(周期表の右上ほど大きいってイメージでOKですね。)
それが大きいということは結合間の電子を
より強く引き付ける原子だということを示す数値です。

つまりNaHでは電気陰性度が大きいHの方が電子を引き付けています。
ではいくつ引き付けるのでしょう?

ここで今度は電子殻の話。
Hの最外殻はK殻なので2個の電子で安定化します。
よってNaHのHはもともと自身で持っていた電子1個に加え、
Na側から1個電子を引き寄せることで安定化出来るのです。
負の電荷を持つ電子1個を引き付けたので
Hの酸化数(電子のやり取りの数)は-1となり、
結果、電子を1個持って行かれたNaは+1となります。
この数値がそれぞれの原子の酸化数となっています。

同様に考えると、
教科書で例外とされている過酸化水素(H2O2)では
電気陰性度の大きいO原子に電子は引き付けられます。
2つあるO原子は価電子が6個なので
最外殻のL殻を安定化するには
それぞれあと2個の電子を引き付けたいところですが、
相手にするHが2個しかなく、電子はそれぞれ1個しか
持っていないのでO原子1個あたり1個の電子しか
受け取れないのです。
なのでこの場合はHが+1、Oは-1となります。

・・・電子のやりとりを考えずに「酸化数」の表示のみを
追いかけて問題を解くスピードを求めるのも、もちろん大切です。
でも理論化学の基礎をしっかりつなげると、
酸化数の例外が理解でき、初めて目にする物質の化学式と出会っても
考える足掛かりがしっかりとすると思いませんか。







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Posted by ミーケン。 at 21:48│Comments(4)受験
この記事へのコメント
とっても分かりやすかったです。
Posted by 雪ん子 at 2015年04月30日 21:41
コメントありがとうございます。
とても嬉しく、これからの励みになります。
雪ん子さんも受験勉強頑張ってくださいね。
応援しています。
Posted by ミーケン。 at 2015年05月01日 22:44
すごく分かりやったです!テスト前に理解出来て助かりました。
Posted by 寒いの嫌いじゃない at 2018年02月07日 00:46
コメントありがとうございます。
少しでも皆さんの学習の手助けになっていると分かると
とてもうれしく思います。
寒いの嫌いじゃないさん、これからもお互いに
頑張っていきましょう。
Posted by みーけん。 at 2018年02月07日 07:38
 
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