2012年09月19日

分子結晶と共有結晶の違い

生徒がよく持ってくる次のような質問がある。

『ダイヤモンドは炭素のみでできていて、炭素は非金属。
非金属元素同士は価電子を共有する共有結合で安定化するので、
ダイヤモンドが共有結晶というのはわかる・・・。
しかし二酸化炭素の成分である炭素と酸素も非金属元素同士で、
互いの価電子を出し合って共有結合するはずなのに
二酸化炭素の個体であるドライアイスはどうして分子結晶なの?』

この質問は「原子と分子」、「結合と結晶」という言葉を
それぞれ意識していないために出てくるものです。

非金属元素の原子同士の結合は共有結合。
その共有結合でいくつかの原子がつながることで
出来上がった物が「分子」です。

その分子が分子間力で引き合って多数集まり、
規則正しく整列することで分子結晶ができあがる・・・。
二酸化炭素は炭素原子1つと酸素原子2つが共有結合で結びつき、
合計3つの原子で1つの二酸化炭素分子をつくっています。
その分子同士が多数集まって結晶となっているので
ドライアイスは分子結晶というわけです。

ではダイヤモンドはというと、
炭素原子同士がいくつもいくつも切れ目なく
共有結合でつながっていくことで結晶全体ができていて、
分子が集まった構造ということではないのです。
言い換えれば結晶そのものが1つの巨大分子というイメージ。
ですからダイヤモンドは共有結晶という名称がついているのです。

センター試験化学の対応として、
非金属元素のみで化学式が書ける物質の固体が
分子結晶というのは一般に正しいです。

ただ、ダイヤモンド,二酸化ケイ素,炭化ケイ素といった
周期表の第14族の元素の単体やそれらを含む化合物は、
非金属元素のみからなる物質だが例外的に共有結晶となることを
意識するとよいでしょう。

よかったら私のホームページ『宮城のつながる化学』ものぞいてみてください。
頑張ってね。受験生。



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Posted by ミーケン。 at 22:24│Comments(10)受験
この記事へのコメント
 ちなみに金属結合を共有結合の一種だと主張する人がいますが、厳密には、結晶共有結合が金属結合で、普通の共有結合は2原子共有結合といいます。ベンゼン環のパイ結合などは6原子共有結合(あるいは分子内共有結合)なので、金属結合に分類されるべきではないでしょうか?つまり結晶は超巨大分子だということになります。
Posted by オルレアン at 2013年08月28日 19:05
コメントへの返事が遅れてしまいました。ごめんなさい。
オルレアンさんは大変深い所まで学習されているのですね。
敬服します。ご質問を読んで、
私も急いで共有結合と金属結合について調べなおしました。

確かに金属結合は結晶全体で電子を共有するので
共有結合の一例とする考え方もあるようですね。
ご質問にあるように共有結合という用語を
2原子間の電子の共有のみに限定するならば、
つながりのある多原子間を電子が移動できるベンゼン分子中の結合などは、多数の原子が存在する結晶全体で電子を共有する金属結合の一例だと言えなくもなさそうです。

しかしそうなると、どの程度の数の原子が結合したら分子と呼び、
どの程度の数以上の原子が結合すると結晶と呼ぶかということも疑問です。分子結晶以外の結晶を巨大分子だと考えるか、
分子は決まった原子数を持ったつながりまでであるとするのかで、
見方は変わってくるような気がします。

いずれにせよ私の理解しているイメージをまとめると、
金属結合は金属結晶全体に電子が非局在化しており、
電子と金属陽イオン間で空間的に結合の方向性を見出すのは難しそうです。
その点ベンゼン分子等の非金属元素の原子同士がいくつか結合している分子では、多原子間を電子が移動できるとはいえ、その移動は空間的な方向性を持ちます。そしてその分子が集まった分子結晶はご存知の通り結晶全体で電子を共有出来ている金属結晶とはまったく違った挙動を示します。
ですからこの2つの結合を一つの同じものであるとまとめてしまうのは少し無理がある気がします。

私は普段予備校で高校化学の「基礎からのつながり」を
大切にした授業を心がけている人間です。
私自身まだまだ成長するために、このご質問のようなレベルの内容も日々学習するべきですが、忙しさにかまけて教材研究も難関大学のものはあまり手にしないのが現状です。
ですから今回のご質問はこちらも刺激を受けましたし、大変勉強になりました。
ブログを読んでいただきありがとうございます。
とても励みになります。最近更新を怠っていますが…(笑)
オルレアンさんも学習頑張ってください。
Posted by ミーケン。 at 2013年08月31日 23:29
二酸化炭素も一応14族の原子を含んでいませんか?
Posted by ならば at 2014年05月04日 12:11
返信が遅れました。ごめんなさい。
ブログを丁寧に読んでくださってありがとうございます。
こちらも励みになります。

私も受験生だったころ、同じ疑問にぶつかりました。
おっしゃる通り炭素もケイ素も第14族の元素で、
ブログで『ダイヤモンド,二酸化ケイ素,炭化ケイ素といった
周期表の第14族の元素の単体やそれらを含む化合物は、
非金属元素のみからなる物質だが例外的に共有結晶となることを
意識するとよいでしょう。』
と表示していますから、疑問は当然です。

結論から言ってしまえば
『炭素は酸素原子と結合する時二重結合で結合する方が安定であり、ケイ素は単結合で結合した方が安定であるので、覚えてしまうしかない。』
ということです。

このことを深く学ぶには大学で学習する電子軌道の理解が必要です。(sp混成軌道とsp3混成軌道の違い)
今すぐに知りたいのであればネットで
『電子軌道 CO2 分子 SiO2 共有 』と検索すれば
詳しいページが探せると思います。参照に見てみてくださいね。

高校化学では単純暗記になってしまう部分が多数あります。
教科書の内容に当てはまらない例外的な部分を
数多く紹介する事はセンター試験対策ではNGです。
教科書に載っていないことの方が多いのですから…。

大学受験対策としては、高校化学の理解の範囲で解ける問題が出題されるのですから、
如何に基本を押さえて初見の問題に対応できるようになれるかが重要です。
そのために必要となる情報を取捨選択して授業をし、
ノートを作るのが私たち予備校講師の仕事です。

あなたのように教科書や授業ノートだけでは説明のつかない部分に気がつき、その部分に目を向け、現状で納得できる程度まででも考えてみることができる人は素晴らしいと思います。
今後も化学、その他の勉強を頑張ってくださいね。
Posted by ミーケン。 at 2014年05月09日 23:10
「共有結晶」を「共有結合の結晶」と学校では習ったのですが、どちらでもいいんですか?
Posted by ラムネ at 2016年05月18日 00:09
コメントありがとうございます。
ブログを読んでくれている人がこちらの励みになります。

ご質問の件ですが、最近の教科書は「共有結合の結晶」と
表記されているものが多いようですね。
以前は「共有結晶」、もしくは「共有結合性の結晶」、「共有結合結晶」などの表記も見受けられました。どちらも意味は同じですが
言葉は変化していくものですから、ご自身の現在使っている
教科書や参考書に合わせた用語を使うようにすれば良いと思います。

それでは勉強頑張ってくださいね。
Posted by みーけん。 at 2016年05月18日 00:32
二酸化炭素の成分は炭素と酸素ですよ
Posted by あ at 2018年06月24日 20:54
コメントありがとうございます。

ホントですね!書き出して五行目でこんな大きなミスしてたなんて、
これまで気が付きませんでした。

ご指摘ありがとうございます。すぐに本文の方も直しておきます。
これからもよろしくお願いします。
Posted by みーけん。 at 2018年06月24日 22:56
二酸化炭素って、分子結晶ですよね?
Posted by ふみふみ at 2023年09月17日 17:58
コメントありがとうございます。
そうですよ~。ふみふみさんの言うとおり
二酸化炭素は分子結晶です。
高校化学は覚えることが多いですが頑張ってくださいね。
Posted by みーけん。 at 2023年09月18日 09:08
 
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