2013年01月25日

コロイドの分類

今回はコロイド溶液について。

「真の溶液」といわれる一般的な溶液(例えば塩化ナトリウム水溶液など)
に対して、コロイド溶液と呼ばれるものは何が違うのか。

答えは液中に溶け込んでいる粒子の大きさ。
真の溶液の中に溶け込んでいる粒子は『溶質』と呼ばれ、
それがイオンでも分子でも、周りの水分子などに代表される『溶媒』と
それほど大きさに違いがない。(10の-8乗cm程度)

対してコロイド溶液の中に溶け込んでいる粒子は『分散質』と呼ばれ、
真の溶液の溶質粒子に比べ、10倍~1000倍と大きいものです。
(10の-7乗~10の-5乗cm程度)
ちなみにコロイドの場合は水分子を溶媒とは言わず『分散媒』と表現します。

ここで、コロイドにはその分散質の種類によっていろいろな呼び名がついています。
親水コロイド,疏水コロイド,分子コロイド,会合コロイド,分散コロイド,正コロイド,負コロイド・・・。
それぞれ一つ一つの代表的なコロイド粒子をいくつかずつ覚えていくと
同じコロイド粒子でいくつもの呼び方があることに気が付きます。
例えば「タンパク質」は親水コロイドで、分子コロイドで、
また酸性中では正コロイド、塩基性中では負コロイドというのが一般的です。

色々な分類上の名前を3つのグループにまとめましょう。

まず「親水・疏水」コロイド。
これは水に対するコロイド粒子のなじみやすさでの分類です。
タンパク質やデンプンなどはアミド結合や水酸基など水分子を引き付ける構造を多く持つ分子なので
その分子の周りに水分子を多数引き付けており、(この状態を水和という)親水コロイドに分類されます。
また水酸化鉄(Ⅲ)や硫黄や粘土などのコロイドは、ほとんど水和水を持たず、
自らの電荷の反発で水中に分散しています。このようなものを疏水コロイドといいます。

次に「正・負」コロイド。
これらはコロイド粒子がどの電荷に帯電しているかで分類した言葉です。
代表例としては正コロイドが水酸化鉄(Ⅲ)、負コロイドが硫黄や粘土。
一般には水和水を持たない疏水コロイドに対してこの分類を当てはめることが多いようです。
しかし、タンパク質は先述したとおり、pHによって
正コロイドにも負コロイドにも変化することも知っておきましょう。
(理由はアミノ酸の単元で学ぶはずです。)

最後に「分子・会合・分散」コロイド3つの分類。
これはコロイド粒子1個の中がどのような構成になっているのかで分類した言葉です。
コロイド粒子を構成している粒子の大きさと集合数による分類、と言い換えてもいいでしょう。
「分子コロイド」は1つの分子だけで、すでにコロイド粒子の大きさになっているもの。
代表例としてタンパク質やデンプンといった高分子化合物が挙げられます。
高分子は1万以上の分子量を持ち、多数の原子が連なった状態なので、それ1分子で
コロイド粒子の大きさとなるのです。
「会合コロイド」はミセルコロイドとも言われ、50~100個の分子が集合することで
1つのコロイド粒子の大きさとなっているもの。
代表例はセッケン分子ですね。
「分散コロイド」は会合コロイド以上にものすごく多数の粒子が集まって
1つのコロイド粒子となっているもの。
代表例は水酸化鉄(Ⅲ)や硫黄や粘土です。

特にこの分散コロイドは計算問題になったとき
「コロイド粒子の数」を求めているのか、
「コロイド粒子1個の中の構成粒子数」を求めているのかを
しっかりとイメージできるかが大切です。

以下のように数字をおおざっぱにした
例題でみてみると頭の整理がしやすいですよ。

〈例題〉
鉄(Ⅲ)イオンが20molあったとして、
熱水中で水酸化鉄(Ⅲ)のコロイドを生成したとします。
このコロイド溶液の浸透圧などの情報からコロイド粒子の
数が5molと分かったとすると、
水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド粒子1つの中に鉄イオンは?

上記のような問いは20molの物がいくつかずつ集合して1つ1つの
コロイド粒子の大きさになっているというイメージがあるなら、難しくないでしょう。
20÷5=4ということで、
コロイド粒子1つの中には鉄イオンが4個入っているとわかるわけです。

文章だけで伝えるのは大変ですが、最後まで読んでくれたあなたはもっと大変でしたね。
どうもありがとうございます。



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Posted by ミーケン。 at 23:10│Comments(4)受験
この記事へのコメント
コロイド溶液の粒子の大きさ
もう少し小さいですよね
Posted by tk at 2014年12月30日 18:05
教科書や参考書にもコロイド粒子の大きさは一般に
「10の-7乗 ~ 10の-5乗cm程度」
と記載されています。

cm単位でなくm単位にすると
「10の-9乗 ~ 10の-7乗m程度」
という表示になりますので
質問者様は単位を見間違えたのではないでしょうか。

参考書によってはマイクロメートル(μm)やナノメートル(nm)の単位で表示しているものもありますよ。
Posted by ミーケン。 at 2014年12月31日 01:15
粒子一つ当たり4molではなく4つだと思うんですが、違うんでしょうか。違う場合は私の考えの間違えを指摘していただけると幸いです。よろしくお願いします。
Posted by yu-ku at 2016年10月19日 23:32
ご指摘ありがとうございました。本当に助かりました。
yu-ku さんの言うとおりです。
今回はちょっとしたミスでなく大事な結論の部分が間違っています。
本当にすみませんでした。
これまでこの文章を最後まで読んでくださった方々にも
yu-kuさんと同じような疑問を持った方が
多数いらっしゃったと思います。重ねてお詫び申し上げます。

すぐに本文の方も訂正しておきます。
今後もこのようなことが無いように
時間をかけて書いた文章を確認することを心がけたいと思います。
Posted by みーけん。 at 2016年10月21日 18:13
 
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