2015年08月09日
錯イオンの表示方法
高校化学の教科書や問題には、いくつかの錯イオンが登場します。
教科書でも丁寧にその名称と表記法は紹介されているのですが、
見た目に複雑そうな化学式なので苦手意識が先行して
きちんと学習していない受験生も多いようです。
今回は教科書を参考にしながら錯イオンについて、
その名称や化学式の表示法を確認していきましょう。
まず、「錯イオンとはどういうものか」というと、
「金属陽イオンに、非共有電子対をもった分子や陰イオンが
配位結合することで形成されるイオン」であるといえます。
このとき金属イオンに配位結合している分子や陰イオンを
「配位子」と呼びます。
また、金属イオンの種類によって配位子の配位結合できる数が
決まっていて、その数を「配位数」と言います。
錯イオンの名称は、
① いくつ の ② 配位子 が ③ 何と言う金属イオン に
配位結合して錯イオンとなっているかを表示したものです。
①②③の順番にギリシャ数詞を用いて、
配位子となっている分子や陰イオンの呼び名、
中心になっている金属陽イオンを言い表わしていきます。
錯イオンそのものの表記を見る前に、
まずは配位子の呼び方を確認しましょう。
例えば塩化物イオン「Cl-」が金属陽イオンに配位結合して
配位子となれば、「クロリド」と呼ばれます。
その他、水酸化物イオン「OH-」が配位子になると「ヒドロキシド」、
シアン化物イオン「CN-」が配位子になると「シアニド」、
アンモニア分子「NH3」が配位子になると「アンミン」、
水分子「H2O」が配位子になると「アクア」、
などと呼ばれます。
次にギリシャ数詞の読み方ですが、1、2、3、4、5、6…の順番に、
「モノ」、「ジ」、「トリ」、「テトラ」、「ペンタ」、「ヘキサ」…
と読みます。日常にもギリシャ数詞の入った名称が色々ありますね。
レールが一本のモノレール、3車輪はトリサイクル、
アメリカの国防総省は五角形の建物で通称ペンタゴン…といった風に。
それでは配位子の呼び方、ギリシャ数詞の読み方を確認したので
実際に錯イオンを表示してみましょう。
例1) ジアンミン銀(Ⅰ)イオン
この錯イオンの名称は、
① ジ ⇒ 2つ の
② アンミン ⇒ アンモニア分子NH3 が
③ 銀(Ⅰ)イオン ⇒ Ag+ に
配位した錯イオンですよ…という名称で、
その化学式は [Ag(NH3)2]+ となります。
つまり錯イオンの化学式は、まず中心になる金属イオン、
次に配位している分子や陰イオン、その数、
最後にこの錯イオン全体としての電荷(イオンの価数)を
[ ]で囲んだ右上に表示する…、というものです。
例に挙げたジアンミン銀(Ⅰ)イオンは、
もともとの銀イオンAg+の電荷(価数)が1+で、
そこに電荷を持たないアンモニア分子が2つ配位結合したので
錯イオン全体としても電荷は1+のままであるというわけです。
では次の例を見てみましょう。
例2)ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン
① ヘキサ ⇒ 6つ の
② シアニド ⇒ シアン化物イオンCN- が
③ 鉄(Ⅱ)イオン ⇒ Fe2+ に
配位した錯イオン・・・ということなので、
その化学式は [Fe(CN)6]4- となりますね。
2+ の電荷を持つ鉄(Ⅱ)イオンFe2+ に1- の電荷を持つ
シアン化物イオンCN- が6つ配位結合したために
全体の電荷が4- になっているのですね。
ちなみにこの錯イオンのように、
錯イオン全体で陰イオンになっている場合は
名称の最後、金属イオンを表示するの部分に
「酸」という文字を入れます。
また、銀イオンは配位子が2つ、鉄(Ⅱ)イオンは配位子が6つ、など
どの金属イオンがいくつの配位数であるかは
高校化学では強引に覚えてしまうしかありません。
さらに中心の金属イオンや配位子の数によって、
錯イオン全体の形も決まっているので同時に覚えてしまいましょう。
まずは以下に紹介する5つの錯イオンを暗記しましょう。
化学式/名称/配位数/色/形 の順に、
・[Ag(NH3)2]+/ジアンミン銀(Ⅰ)イオン/2/無色/直線形
・[Cu(NH3)4]2+/テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン/4/深青色/正方形
・[Zn(NH3)4]2+/テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン/4/無色/正四面体形
・[Fe(CN)6]4-/ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン/6/淡黄色/正八面体形
・[Fe(CN)6]3-/ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオン/6/黄色/正八面体形
教科書ではきちんと表になっていてとても見やすいですし、
錯イオンの形も実際に図で表示されているので
その表記法も確認しておいてください。
最後に錯イオンはあくまでも金属イオンに配位子が配位結合して、
全体でもイオンとしての電荷がある状態ということに注意しましょう。
よく、アンモニウムイオンやオキソニウムイオンを
錯イオンと勘違いしてしまう生徒がいます。
どちらも配位結合が含まれるのでその勘違いが生まれるのですが、
これらは金属イオンを含まないので錯イオンとは言いません。
また、金属イオンと非金属イオンの組み合わせである塩についても
勘違いが起こることがあります。
例えばAg+とCl-とで形成されるAgClは
Ag+とCl-とがイオン結合により多数集まったイオン結晶(塩)であり、
錯イオンとは言いません。
全体の電荷はゼロでありイオンとは言わないと考えてもOKです。
ちなみに錯イオンも反対の電荷を持つイオンと塩(錯塩)を作ります。
例えば[Cu(NH3)4]SO4:テトラアンミン銅(Ⅱ)硫酸塩や
K4[Fe(CN)6]:ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムなどです。
このような錯イオンや錯塩をまとめて「錯体」と言ったりもします。
錯イオンについては、一度にすべてを覚えようとせずに
一つひとつ丁寧に意味を追いましょう。
まずは最低限今回の5つを自分のものにすることを目標にしてみましょう。
この理解・暗記だけでも色々な問題に対応できますよ。
頑張ってみてくださいね。
教科書でも丁寧にその名称と表記法は紹介されているのですが、
見た目に複雑そうな化学式なので苦手意識が先行して
きちんと学習していない受験生も多いようです。
今回は教科書を参考にしながら錯イオンについて、
その名称や化学式の表示法を確認していきましょう。
まず、「錯イオンとはどういうものか」というと、
「金属陽イオンに、非共有電子対をもった分子や陰イオンが
配位結合することで形成されるイオン」であるといえます。
このとき金属イオンに配位結合している分子や陰イオンを
「配位子」と呼びます。
また、金属イオンの種類によって配位子の配位結合できる数が
決まっていて、その数を「配位数」と言います。
錯イオンの名称は、
① いくつ の ② 配位子 が ③ 何と言う金属イオン に
配位結合して錯イオンとなっているかを表示したものです。
①②③の順番にギリシャ数詞を用いて、
配位子となっている分子や陰イオンの呼び名、
中心になっている金属陽イオンを言い表わしていきます。
錯イオンそのものの表記を見る前に、
まずは配位子の呼び方を確認しましょう。
例えば塩化物イオン「Cl-」が金属陽イオンに配位結合して
配位子となれば、「クロリド」と呼ばれます。
その他、水酸化物イオン「OH-」が配位子になると「ヒドロキシド」、
シアン化物イオン「CN-」が配位子になると「シアニド」、
アンモニア分子「NH3」が配位子になると「アンミン」、
水分子「H2O」が配位子になると「アクア」、
などと呼ばれます。
次にギリシャ数詞の読み方ですが、1、2、3、4、5、6…の順番に、
「モノ」、「ジ」、「トリ」、「テトラ」、「ペンタ」、「ヘキサ」…
と読みます。日常にもギリシャ数詞の入った名称が色々ありますね。
レールが一本のモノレール、3車輪はトリサイクル、
アメリカの国防総省は五角形の建物で通称ペンタゴン…といった風に。
それでは配位子の呼び方、ギリシャ数詞の読み方を確認したので
実際に錯イオンを表示してみましょう。
例1) ジアンミン銀(Ⅰ)イオン
この錯イオンの名称は、
① ジ ⇒ 2つ の
② アンミン ⇒ アンモニア分子NH3 が
③ 銀(Ⅰ)イオン ⇒ Ag+ に
配位した錯イオンですよ…という名称で、
その化学式は [Ag(NH3)2]+ となります。
つまり錯イオンの化学式は、まず中心になる金属イオン、
次に配位している分子や陰イオン、その数、
最後にこの錯イオン全体としての電荷(イオンの価数)を
[ ]で囲んだ右上に表示する…、というものです。
例に挙げたジアンミン銀(Ⅰ)イオンは、
もともとの銀イオンAg+の電荷(価数)が1+で、
そこに電荷を持たないアンモニア分子が2つ配位結合したので
錯イオン全体としても電荷は1+のままであるというわけです。
では次の例を見てみましょう。
例2)ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン
① ヘキサ ⇒ 6つ の
② シアニド ⇒ シアン化物イオンCN- が
③ 鉄(Ⅱ)イオン ⇒ Fe2+ に
配位した錯イオン・・・ということなので、
その化学式は [Fe(CN)6]4- となりますね。
2+ の電荷を持つ鉄(Ⅱ)イオンFe2+ に1- の電荷を持つ
シアン化物イオンCN- が6つ配位結合したために
全体の電荷が4- になっているのですね。
ちなみにこの錯イオンのように、
錯イオン全体で陰イオンになっている場合は
名称の最後、金属イオンを表示するの部分に
「酸」という文字を入れます。
また、銀イオンは配位子が2つ、鉄(Ⅱ)イオンは配位子が6つ、など
どの金属イオンがいくつの配位数であるかは
高校化学では強引に覚えてしまうしかありません。
さらに中心の金属イオンや配位子の数によって、
錯イオン全体の形も決まっているので同時に覚えてしまいましょう。
まずは以下に紹介する5つの錯イオンを暗記しましょう。
化学式/名称/配位数/色/形 の順に、
・[Ag(NH3)2]+/ジアンミン銀(Ⅰ)イオン/2/無色/直線形
・[Cu(NH3)4]2+/テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン/4/深青色/正方形
・[Zn(NH3)4]2+/テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン/4/無色/正四面体形
・[Fe(CN)6]4-/ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン/6/淡黄色/正八面体形
・[Fe(CN)6]3-/ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオン/6/黄色/正八面体形
教科書ではきちんと表になっていてとても見やすいですし、
錯イオンの形も実際に図で表示されているので
その表記法も確認しておいてください。
最後に錯イオンはあくまでも金属イオンに配位子が配位結合して、
全体でもイオンとしての電荷がある状態ということに注意しましょう。
よく、アンモニウムイオンやオキソニウムイオンを
錯イオンと勘違いしてしまう生徒がいます。
どちらも配位結合が含まれるのでその勘違いが生まれるのですが、
これらは金属イオンを含まないので錯イオンとは言いません。
また、金属イオンと非金属イオンの組み合わせである塩についても
勘違いが起こることがあります。
例えばAg+とCl-とで形成されるAgClは
Ag+とCl-とがイオン結合により多数集まったイオン結晶(塩)であり、
錯イオンとは言いません。
全体の電荷はゼロでありイオンとは言わないと考えてもOKです。
ちなみに錯イオンも反対の電荷を持つイオンと塩(錯塩)を作ります。
例えば[Cu(NH3)4]SO4:テトラアンミン銅(Ⅱ)硫酸塩や
K4[Fe(CN)6]:ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウムなどです。
このような錯イオンや錯塩をまとめて「錯体」と言ったりもします。
錯イオンについては、一度にすべてを覚えようとせずに
一つひとつ丁寧に意味を追いましょう。
まずは最低限今回の5つを自分のものにすることを目標にしてみましょう。
この理解・暗記だけでも色々な問題に対応できますよ。
頑張ってみてくださいね。
Posted by ミーケン。 at 10:10│Comments(0)
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