2017年04月06日
酸化還元反応において硫酸酸性とする理由って・・・?
酸化還元反応をテーマとした問題の文章中に、
「硫酸酸性において・・・」という表現をよく目にします。
この表現について、予備校に来る生徒たちから
硫酸はなぜ必要なの?という質問が何度かありました。
今回は、この質問の答えを、
代表的な酸化剤である過マンガン酸カリウムKMnO4を
用いる酸化還元滴定を例にとって書いてみようと思います。
過マンガン酸カリウムは水溶液中でカリウムイオンK+と
過マンガン酸イオンMnO4-とを発生し、その過マンガン酸イオンの方が
酸化剤として働くわけですが、その半反応式は以下の通り。
MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O ・・・(酸性溶液中での反応式です。)
上記のように過マンガン酸イオンは酸化剤として相手を酸化するときに
自身の8倍もの量の水素イオンを必要とするので、
水溶液中の水素イオン濃度を高める、
つまり溶液を酸性にしておく必要があるのです。
例外もありますが、その他多くの酸化剤も同様で
酸性溶液中で反応を起こしやすくなっています。
ではなぜ、硫酸なのでしょう?
塩酸や硝酸といったその他の酸ではだめなのでしょうか?
・・・この疑問も、ほんの少し難しめの問題としてよく出題されています。
以前このブログの別のタイトルで
酸化還元反応においては必ず酸化剤となる物質、
また、必ず還元剤となる物質を紹介しました。
そこでも触れていますが、
ハロゲン化物イオンは強い酸化剤と出会うと自身は還元剤として働きます。
また、濃硝酸や希硝酸はどちらも酸化剤としても働きます。
しかし硫酸は、濃硫酸の状態で熱を加えると酸化剤として働きますが、
希硫酸の状態では酸として働くだけで酸化剤にはなりません。
つまり、酸化還元滴定の実験において
硫酸で酸性にせずに塩酸を用いて溶液を酸性にすると、
ビーカー内で過マンガン酸イオンを待ち受けている還元剤だけでなく、
塩酸自身も還元剤として反応してしまい、
過マンガン酸カリウム水溶液の滴定量がずれてしまうし、
硝酸だと、ビーカー内の還元剤に対して過マンガン酸イオン同様、
硝酸自身が酸化剤として働くために
やはり過マンガン酸カリウム水溶液の滴定量がずれてしまいます。
よって問題文の通り硫酸で酸性にしておくことが望ましい、というわけです。
沖縄では桜の木はほとんどが葉桜に変わっています。
このブログを書きはじめてから6度目のこの季節を迎えました。
文字ばかりのこんなブログを見てくださる皆さんに心から感謝しています。
これからも化学を必要とする受験生を応援するため、
少しでも力になれるように頑張っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
「硫酸酸性において・・・」という表現をよく目にします。
この表現について、予備校に来る生徒たちから
硫酸はなぜ必要なの?という質問が何度かありました。
今回は、この質問の答えを、
代表的な酸化剤である過マンガン酸カリウムKMnO4を
用いる酸化還元滴定を例にとって書いてみようと思います。
過マンガン酸カリウムは水溶液中でカリウムイオンK+と
過マンガン酸イオンMnO4-とを発生し、その過マンガン酸イオンの方が
酸化剤として働くわけですが、その半反応式は以下の通り。
MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O ・・・(酸性溶液中での反応式です。)
上記のように過マンガン酸イオンは酸化剤として相手を酸化するときに
自身の8倍もの量の水素イオンを必要とするので、
水溶液中の水素イオン濃度を高める、
つまり溶液を酸性にしておく必要があるのです。
例外もありますが、その他多くの酸化剤も同様で
酸性溶液中で反応を起こしやすくなっています。
ではなぜ、硫酸なのでしょう?
塩酸や硝酸といったその他の酸ではだめなのでしょうか?
・・・この疑問も、ほんの少し難しめの問題としてよく出題されています。
以前このブログの別のタイトルで
酸化還元反応においては必ず酸化剤となる物質、
また、必ず還元剤となる物質を紹介しました。
そこでも触れていますが、
ハロゲン化物イオンは強い酸化剤と出会うと自身は還元剤として働きます。
また、濃硝酸や希硝酸はどちらも酸化剤としても働きます。
しかし硫酸は、濃硫酸の状態で熱を加えると酸化剤として働きますが、
希硫酸の状態では酸として働くだけで酸化剤にはなりません。
つまり、酸化還元滴定の実験において
硫酸で酸性にせずに塩酸を用いて溶液を酸性にすると、
ビーカー内で過マンガン酸イオンを待ち受けている還元剤だけでなく、
塩酸自身も還元剤として反応してしまい、
過マンガン酸カリウム水溶液の滴定量がずれてしまうし、
硝酸だと、ビーカー内の還元剤に対して過マンガン酸イオン同様、
硝酸自身が酸化剤として働くために
やはり過マンガン酸カリウム水溶液の滴定量がずれてしまいます。
よって問題文の通り硫酸で酸性にしておくことが望ましい、というわけです。
沖縄では桜の木はほとんどが葉桜に変わっています。
このブログを書きはじめてから6度目のこの季節を迎えました。
文字ばかりのこんなブログを見てくださる皆さんに心から感謝しています。
これからも化学を必要とする受験生を応援するため、
少しでも力になれるように頑張っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by ミーケン。 at 15:02│Comments(2)
│受験
この記事へのコメント
酸化還元反応についてのページで塩化物イオンは還元剤としてではなく酸化剤としてはたらくのではないでしょうか?
Posted by 匿名 at 2019年06月25日 22:06
酸化還元反応を起こす場合、塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンは一般に還元剤として働きます。イメージとしては塩化物イオン「Clー」の酸化数はー1、もともと価電子7個の塩素原子に電子が一つ入った状態です。つまり最外殻電子は8個で安定な状態。こいつが酸化還元反応後、酸化数が動くとすれば、これ以上電子を受け取らないので電子を減らす方向にしか酸化数は動かない、言い換えれば自身は酸化されるしかない、つまり相手を還元する還元剤ということです。
ちなみにハロゲンの単体である塩素「Cl2」は酸化剤ですよ。「Cl-」などのハロゲン化物イオンと、「Cl2」などのハロゲン単体、しっかり区別するように気をつてけてくださいね。
ちなみにハロゲンの単体である塩素「Cl2」は酸化剤ですよ。「Cl-」などのハロゲン化物イオンと、「Cl2」などのハロゲン単体、しっかり区別するように気をつてけてくださいね。
Posted by みーけん。 at 2019年06月25日 22:32